2016年4月27日水曜日

2016.4.25(月) 勾留理由開示公判 Bさんの意見陳述

 4月25日(月)、東京地裁で開かれた勾留理由開示公判における、Bさんの意見陳述を掲載します

 Bさんは冒頭、「みなさん、お元気でしょうか? 疲れていないか心配しています」と傍聴席に語りかけたのち、裁判官に相対し、しっかりとした口調で約10分間にわたり意見を述べました。日本近現代における野宿労働者差別、身分差別を弾劾する、実に感動的なものです。ぜひご一読ください。

 ※「乞食」など、もっぱら差別の意図を含んで使用される文言を含んでいますが、Bさんの主張において、身分差別を弾劾する目的で使用されていることが明白であり、文脈において必要な表現であると判断し掲載します。


【意見陳述】


 私が、なぜ野宿・日雇労働者運動にとりくむのか理由を述べます。

 失業者の存在を前提にして成立している労働市場において、幼少期からの人格支配を通じ私たち労働者は過当に職の獲得競争にさらされています。その反動でか、失業者に対する労働者の間での目線もとても厳しいものがあります。人より一円でも高い所得を得て、一円でも安く商品を買いたいという市民としての感情は、労働市場でも同じ作用をはたらき、自らよりも劣位な条件で就労している労働者の状態に恐怖を抱くことにより、自分の優位というものを確認し、そのことで労働力を再生産せざるを得ないことを、私たち労働者は身をもって知っています。すなわち、資本主義は私たち貧しい労働者を必要とし、そんな私たちの人生は悲惨なものでなくてはならぬと体制は常時圧力をかけつづける。この市民社会とは、私たちを差別する事なしにはやっていけない宿命を背負い、成立してしまっています。ではどうしたらいいのか、これは後で述べます。

 私は、現代において身分制によらない乞食や浮浪者というおこないを一切否定しない立場ですが、一般市民の間では、憎しみすらこめられた、罵倒語です。明治維新後の弾左衛門制度が解体され、それまでの各種業務独占権が市場原理にシフトして、大日本帝国本国人の間での身分性差別は旧穢多身分が住まう地区として奉行などから指定された場所に対する、すなわち部落差別へと変化しました。弾左衛門配下の非人頭、浅草の車善七や代々木の久兵衛などの下に所属していた非人小屋も解散させられ、御用勤めや芸能や物乞いの職を失った旧非人身分や無宿・野非人たちは、貧民窟に合流する等しながら、旧穢多身分らとともに、そして将来的には、アイヌ、沖縄人、朝鮮人、中国人らとともに、人が嫌がるきつい仕事をさせられ、帝都東京の建設を担わされました。被差別身分からならば、露骨に搾取ができる、この構造は弾左衛門制度時代にはなかった様にも思います。それは反逆により弾左衛門の命そのものを危うくした事であろうし、そもそも、資本主義が賃金労働者を搾取して富を集積していく時代が到来したからだと言えると思います。

 つまり現代、少年男性が野宿の仲間を乞食だ浮浪者だと言って襲撃し、延べ平均一年に一人殺されるのは、労働者階級のもつ歴史とその少年が断絶させられたところで起きており、その少年は新自由主義の拡大による格差の拡大の中で、希望をもって労働市場に参加する事ができないから、だから野宿の仲間を襲うのだと思います。私はそれは、襲撃少年が抱える自立という概念へのジレンマによるものだと思います。少年男性から成年男性になるに当たって、身分が高い職は、コネがあったり高学歴の少年が全てもっていってしまうが、自立せねばならない。所得が低いと、結婚し家長になることもできない。では自立とは何かという無理難題を押しつけられたとき、市民社会の中で自立更生の対象とされている、野宿の仲間。市民が差別する野宿の仲間が少年と同じ地域で生活しています。まさにスケープゴートです。

 失対労働者に対する国のネガティブキャンペーンによる失業対策事業の打ち切り、それによる全日自労の解体、国労組合員に対するネガティブキャンペーンによる国鉄民営化と総評の解体、これら労働者が自身の階級の歴史から切り離されていく国策に比例して、野宿者襲撃事件が増大してきたことも、見過ごすことはできません。

 東京五輪は私たち労働者解放の願いに何ら寄与するものはありません。戦前、富国強兵と国威発揚のための幻の東京五輪の誘致のために、江東区枝川へと朝鮮人バラックが強制移転させられ、戦後建設され街のシンボルとなった朝鮮学校に「土地を明け渡せ」と迫った当時知事であった石原慎太郎氏は、今回の東京五輪誘致の立役者です。オリンピックで景気が良くなり日本が元気になるという幻想をふりまく復古主義右翼、その尖兵であるJSCによる仲間の住居に対する強制執行を私は、怒りをこめて徹底的に弾劾します。たとえ2020年に東京五輪開催が強行されることになったとしても、その聖火リレーは、私たちの世界中の仲間による抗議の渦につつまれて、徹底的に妨害がされるでありましょう。団体交渉での合意事項を一方的に破棄し、話し合いを拒み続け、なりふりかまわず仲間に襲いかかったJSCを絶対許すことができません。

 そんな極悪非道、悪魔最悪JSCに、反撃する仲間のみなさんの様子を弁護士から聞いて、私は励まされています。外苑前を埋め尽くすスワローズファンに向かって、懸命にビラを手わたす姿や、JSCの門前で職員にシュプレヒコールを叩きつける姿、裁判所前で炊き出しをしたり、公園でみなでメシを食う姿を目に思い浮かべると、この闘いこそが、日本労働者階級の解放への筋道を指し示す闘いであるという確信が胸に込み上げてきます。生存権を否定するカリコミ特措法であるホームレス自立支援法にいまだに幻想を抱いている、労働者運動を装った職業活動家集団やJSC・役人・市民などから「自立をしろ」などというお説教をされるいわれは私たちには更々ないのです。

 この大失業時代において、明治公園現地は、競争に疲れ果てた労働者同士が、出会い直し、労働者としての尊厳を取り戻す場として、老若男女、出自も身分も所得もちがう様々な人間が集う、色彩ゆたかで人情あふれる場所として、閉塞感に覆われた東京の中で、光り輝いています。そこに一歩足を踏み入れると、人が人を搾取することのない社会を展望することができ、仲間とつながることで差別と闘う事ができるのだという元気がわいてきて、世界中の仲間に会いたくなります。明治公園から世界が見える、このせちがらい東京の中でのまさに革命の聖地と言える場所だと思います。そんな素敵な場を育んでくれた明治公園のみなさんに、心からの感謝を込めて、私の意見とかえさせてもらいます。

 ともにがんばりましょう。ご清聴ありがとうございました。

あと一息... Bさん救援カンパをお願いいたします

既報のとおり昨日4月26日(火)、Bさん釈放をかちとることが出来ました。
さらに10日間の勾留延長を許さずぶじBさんを取り戻すことが出来たのは、ひとえに、多くのみなさんがご注目、ご支援くださった結果です。
救援会一同、心より感謝申し上げます。本当に有難うございます!

といいつつ、すみません、度重なる弾圧に、救援カンパが約4万円、現時点で足りていないことが判明。。。

いまひとたびのご支援をお願いしたく、呼びかけさせていただきます。
5月10日(火)までの受付となります。

たいへん心苦しいかぎりではありますが、今一度ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


【救援カンパ 振込先】

 みずほ銀行渋谷支店(普)9095210 「のじれん」
 郵便振替口座 00160--33429 「渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合」
 ※「救援」の旨明記ください。
 ※ 明記が難しい場合、カンパ額の一桁目を「9円」にしていただくとたすかります。例)1009円 

<連絡先>

オリンピック強制排除について
 国立競技場周辺で暮らす野宿生活者を応援する有志
   メール 
noolympicevict@gmail.com   ブログ http://noolympicevict.wix.com/index#!g/u1ok7
   ツイッター https://twitter.com/noolympicevict

Bさん救援について
 オリンピックによる野宿者追い出しを許さない 新国立競技場3.2-4.16弾圧救援会    
   メール shin.kokuritu.danatu@gmail.com   ブログ http://oidashisuruna.blogspot.jp/
   ツイッター https://twitter.com/reclaimmpark

A君、B君を迎えに行くの巻  ~ 4月26日(火) Bさん釈放ドキュメント

 4/16明治公園での強制執行で荷物の返還を求める中で不当逮捕されたBさん。
  ※詳しくは
抗議声明事実経過
 
 不当逮捕から10日目、勾留満期前日の4/25(月)、東京地裁にて勾留理由開示公判が開かれた。
 裁判官や検事が勾留理由開示公判を嫌がり、公判当日に釈放となるケースも多々あり、若干期待していたが、公判前地裁接見も入り、これは勾留延長も付き20日コースかなと思われた。
  ※Bくんも勾留理由開示公判当日の午前は釈放も有り得るとそわそわしていたようである。

 勾留理由開示公判では山本弁護士、戸舘弁護士から被疑事実の根拠となる仮処分、強制執行が数多の違法性が指摘され、裁判官の顔を引きつらせた。

 Bくんの意見陳述は堂々たるもので、涙を誘った。
 救援会と弾圧に怒る仲間で法廷の内外を埋め、徹底的に争う姿勢を示し、権力側を圧倒した。
  ※弁護士さん、Bくんの意見陳述は近日公開

 これは1回目の勾留満期4/26(火)の釈放も有り得るのではないか?
 勾留理由開示公判を終え報告会の中で、釈放の可能性が再度話された。

 そうすると問題が持ち上がった。Bくんは靴が片方しか入っていない…
 4/16逮捕当日、Bくんの靴は高く宙を舞い、片方の靴は現場に残された。
 釈放となると片足、裸足で帰って来なければならなくなる…
  ※かつて拇印を押さなければ靴は返却しないと挑発され、靴を投げつけ両足裸足で釈放になった仲間もいた…
 
 片方の靴は救援会で回収して、差し入れなきゃねと話し合われていたものの、連携が噛み合わず差し入れをすっかり忘れていたのだ…

 これはマズい…どうするか…相談した結果、勾留満期の朝、弁護士さんから検事に問い合せを入れてもらうことに。
 
 釈放がわかれば、すぐさま届けよう、これで釈放になっても問題ない。
 まあ政治弾圧は20日満期覚悟だ、釈放を期待するとガックリくるしねと
普段通りの朝を過ごしていると10時、3.2弾圧当該のAの携帯に弁護士さんより電話。

 「Bさん釈放だって、手続きがあるから昼ぐらいになるかも」

と連絡。すぐさま救援会、明治公園、山谷と関係者に連絡を回し、「靴を届けてくるよ」とA。手回しの良い有志によって、既にBくんの靴は袋に入っている。
 どうせなら拡声器もと、自転車に積み一路、原宿署へ。
 

 釈放の前日には留置所に釈放の連絡が伝わっている節がある(かつて釈放前日に翌日の自弁=自費購入昼食を注文したら断られたことあり)が、ギリギリまで当人には伝えられない。
 急に荷物をまとめろ、ロッカーの荷物を出せと言われ釈放となる。
 
 出迎えに向かったAは、原宿署前の路上からBの収容房に向け、「401号(Bくんの留置番号)聞こえるか、釈放やぞー」と拡声器で伝えようと企んだ。
 留置官はギリギリまで釈放の伝達を伏せているところを、外から伝えると、面目を潰すことになる。
 
 そんなことを企んでいたが、これで釈放が伸びると悪いなと思い直し
先に靴を差し入れることに。

 原宿署1階ロビーの受付に「401号に差し入れ」と伝えると、なにやら内線で連絡を取り「案内が来るので、ソファーで待つように」との指示。

 待てど暮らせど案内がやって来ず、「どないなっとるんや」と問い質すと
「留置が立て込んでいるので、もう少し待て」と受付。
 痺れを切らし、「差し入れの妨害すなや、4階やろ、案内いらんわい」と受付の制止を振り切り、階段で4階へ。
 4階に上がるとエレベーターホールの椅子に背広の公安刑事が3名。
 Bくんに取り調べを拒否された公安刑事がハイエナのように、Bの出房を待ち構えている。

 Aは「401号に差し入れや、釈放やろ、聞いとるんや」と差し入れ受付カウンターに靴を置く。
 差し入れ受付担当は衝立の後の上司に「どうします?」と確認。
 「分かった分かった出すから」とBくんをすぐ出すと。
 
 受付カウンター向かいの喫煙室に入り、一服し、ガラス越しに留置所扉を眺め待つ。
 ものの5分で扉が開き、留置所貸し出しのグレーのスウェット(トメ)に身を包んだBくんの姿。喫煙室の扉を開け「よぉ、おかえり!靴持ってきたぞ」と声をかけると、目を丸くするBくん。
 
 驚きつつ靴を受け取り、「タバコ吸わせて」と喫煙室に入り、タバコを受け取るBくん。付き添っていた留置官5名が焦り「コラやめろ、後にしろ」と怒鳴り、喫煙室に雪崩れ込む。

 「おら、釈放やろ。自由の身や、偉そうに制限かけんなや」と喫煙妨害をブロックし、Bくん11日ぶりの一服。
 留置官5名はどれもAの3月留置で馴染みの顔ぶれ、「久しぶりやんけ」と声をかけると、留置官苦笑。

 Bくんは差し入れ品や預かり品の引き渡し書類手続きや、着替えがあるので、「下で待ってるで」と原宿署玄関へ。
 
 玄関先でBくんを待っていると、出迎えが気に食わないのか原宿署署員がワラワラ10名ほど出てくる。即座にビデオカメラを向けると、柱の陰に隠れる原宿署警官。

 せっかくなので拡声器を取り出し、原宿署に向け抗議情宣開始。

 原宿署留置所での拷問、虐待。警視庁保護室での死者など数々の悪事を暴露すると、警官が怒鳴り散らし抗議情宣を妨害。無視し抗議を続けると、道行く観光客が足を止め話に聞き入る。

 「出迎えやろ、静かにしろ」と原宿署警官。
 「出迎えと抗議行動や、邪魔すんな!今日は留置に抗議や、捜査は黙ってろ、介入すんな」と大騒ぎ。
 そんな中、Bくんが玄関口に。
 「おっかえり、さ、さ、釈放一発かましてくれ」とBくんにマイクを渡すと、「寝起きなんやけどなぁ」と言いつつマイクを受け取り (釈放はないと朝食後、昼寝していたそう)、どっしりとした怒声が原宿署のビル全体に響き渡る。

 慌てた原宿署員、公安が取り囲む。
 「無実の罪で11日間、自由を奪っておいて、偉そうにすなや」
 「まずは誤認逮捕ごめんなさいやろが」
と警視庁・検察の悪事を大音響で暴露。

 一緒に出迎えに来た明治公園住人の仲間が飄々と「わぁ無実なのに、酷いわねぇ」と煽る煽る。さらに大騒動、原宿署てんてこ舞い。
 最後に「バッカヤロー」の弾劾を叩きつけ、「兄貴そろそろ行きますか」で颯爽と引き上げ。
 政治弾圧なぞで潰されない、無駄ムダ。
 弾圧かければ悪事をしっかり騒ぎにし暴露すること。

 明治公園被弾圧コンビABでしっかり実践してきました。
 勾留しても保護房実状暴露、釈放しても大騒ぎ、社会運動を妨害介入すると面倒だぞと、おまわりの脳裏に刻む。

 
 3.2弾圧A、4.16弾圧B、共に元気です。

 4.16強制執行で住居を潰された明治公園住人も、即日住居再建で元気です。

 AB奪還で次は、暴挙を強行したJSC、東京地裁、執行官への徹底追及の反転攻勢です。

 今後とも意気の良い運動を展開してまいります。ご注目を。合流を!
 救援協力ありがとうございました。

                      (文責:3.2弾圧当該A)

 

2016年4月25日月曜日

Bさんが「保護房」に丸1日監禁された件で、弁護士より原宿署に対し抗議文が提出されました


 勾留理由開示公判を目前に控えたBさんが「保護房」に叩き込まれ監禁された件の続報です。
 4月23日(土)当日夜と本日24日(日)に弁護士が駆けつけ、監禁中のBさんと接見。そして、監禁から丸1日が経過した本日24日午後、ようやくBさんが「保護房」から解放されたことが分かりました。まずは安堵。保護房送りにもめげずに弁護士接見を要求したBさん、そして即座に駆けつけてくださったお二人の弁護士の尽力によるものです。本当によかった。
 夜には、弁護士から原宿署に対し抗議文が提出されました。Bさんが外からの激励の声に応えようとほんの一度だけ声を上げたことをもって、大勢の警察官に無理矢理ひきずりだされ「保護房」に入れられた経緯、さらに、監禁中に起こったいやがらせの数々についても徹底的に追及する内容です。ぜひご一読ください。
 それにしても、原宿署の留置担当官、至近距離で威圧しながら幼児口調で「ああ、坊ちゃん、坊ちゃん、何かしゃべってみまちょうね~」とか、いったい何をやってるんでしょうか警察は。
 本抗議文は、明日25日の勾留理由開示公判を前に、担当検察官および裁判所にも提出される予定です。

 










 
 

2016年4月24日日曜日

原宿署がまたしても暴挙!Bさんが「保護房」に叩き込まれました

 4月23日(土)夕方、弁護士の元に、Bさんが接見を求めていると原宿署から連絡が入りました。夜遅くに駆けつけた弁護士を通じて、なんとBさんが「保護房」に入れられていることが判明。Aさんがやられたような拘束具は使用されていないようですが、寝具もなく電気が付けっぱなしで、眠れない状態を強いられているとのこと。理由は23日午後、外にいる私たちが開催した現状報告会の後に、参加者で原宿署を訪れ激励行動を行なった、それにBさんが呼応したことが問題だと。なぜそんなことが懲罰対象になるのかまったく意味不明です。中と外を分断させる悪意以外の何物でもなく、勾留理由開示公判を2日後に控えたBさんに対する嫌がらせでしかありません。原宿署はただちに保護房からBさんを出せ!また続報します。ご注視お願いします。

【4月23日現在】 4.16弾圧 事実経過

 明治公園野宿者強制執行、そしてBさん不当逮捕から1週間が経過。Bさんの置かれている状況についてご報告します。

 Bさんは4月16日(土)当日、管轄署である四谷署に連行されたのち、(四谷署が改装中との理由で)原宿署に移送され、留置されました。その最初の接見で判明した驚きの事実が・・・。Bさんが現場で警察車両に無理やり押し込められたさい、強制執行の下請け業者らしき作業服姿でソフトモヒカン頭の男性が1名、公安警察の要請で警察車両に同乗したことが分かりました。さらに、この人物は、原宿署に到着後、留置前強制身体検査の場にまで同行、なんと、Bさんと並んでの写真撮影が行なわれたと... 一体どういうことなのか? 警察以外の人間が身体検査の場にまで来るなどといったことがありうるのか? 当日、強制執行に抗議する私たちを次々と暴力的に排除した、中でも際立って暴力的だったのが黄色い腕章をした下請け業者「法生社」の作業員たちでした。そのうちの一人と思われる人物が、文字通り丸裸にされる身体検査の場に同席などありえない、あってはならない... 真相は藪の中です。

 Bさんは現在、元気に黙秘・取調べ拒否でがんばっていますが、全身に無数の痣すり傷と痛みを訴え初日に診察を要求。当初警察は「名前も分からない、保険証もない、そういう人を普通医者は診ない」と拒否。重ねて要求し、何とかその日のうちに警察病院に行くことができましたが「打撲と言われただけ」「診断書は黙秘だと出せないと言われた」とのこと。当日の執行官と屈強な作業員、さらに大量に動員されたアルソック警備員、警察・公安による抗議者排除は凄まじいものでした。中でもBさんに加えられた暴行は相当に酷かったはず。そもそも「黙秘」も「受診」も被疑者の権利です。にもかかわらず、こうした警察・病院の対応はたいへん不当であり許しがたいものです。

 逮捕翌日の17日(日)には、Bさんに早くも10日間の勾留が決定されてしまいました。現行犯逮捕であり、強制執行は遂行されてしまっているのに、さらに10日間も勾留する必然性があるでしょうか? そうして身柄を不当に拘束しておく中で、Bさんに対し相次ぐ人権侵害が現在進行形で起こっている状況を到底許すことはできません。17日には加えて、 何社もの大手全国紙とテレビ局一社が、個人情報をさらす形で逮捕報道をしました。3.2Aさん不当逮捕(3月22日釈放)と同様、公安警察の見解がそのままに垂れ流されています。そこには、背景にあるJSC(日本スポーツ振興センター)による野宿者排除の問題性にはまったく触れられておらず、極めて一方的な内容です。

 今回のBさん弾圧は、何がなんでも新国立競技場建設を強行したいJSCが、オリンピックの名の下に国家権力をフル動員して野宿住人を強制排除した、その過程で引き起こされたものであり、3.2Aさん弾圧と連続した明治公園野宿者弾圧であることは明白です。私たち救援会は、「新国立競技場3.2-4.16弾圧救援会」として引き続きBさん救援に取り組みます。暴力的に寝場所を奪われてしまった野宿住人の生活再建に、Bさんの存在は不可欠です。

 Bさんを一刻も早く取り戻す。
 既報のとおり、勾留満期を迎える直前の4月25日(月)に、Bさんの勾留理由開示公判が開かれます。

 25日当日は、昼・東京地裁~公判~夕方・JSC行動と、連続行動を打ちます。
 大結集を呼びかけます。参加可能な時間帯に来ていただくのでも充分ありがたいです。
 また、救援カンパによるご支援を重ねてお願い申し上げます。九州・熊本で大震災の最中にあり心苦しいかぎりですが、ご協力どうぞよろしくお願いいたします。



4月25日(月) オリンピックによる野宿者追い出しを許さない!一日連続行動
正午》 

 勾留理由開示公判直前 
 Bさん激励と仮処分決定・不当逮捕勾留に抗議!東京地裁前 情宣
  12:00 集合 東京地裁前

午後》 

 Bさんが出廷します! 勾留理由開示公判 決定
  東京地裁 430号法廷(警備法廷)
  13:00 集合 傍聴の説明 打ち合わせ
  傍聴券配布 13:10ころの見通し
  13:30 開廷  弁護士による求釈明、Bさん意見陳述
  ※終了後、報告会とメシ 

夕方》 

 JSC(日本スポーツ振興センター)に大抗議!!!
  17:30 JSC仮事務所前 集合
  (港区北青山2-8-35 秩父宮ラグビー場前 メトロ銀座線外苑前徒歩3分 
http://tiny.cc/d6ss9x

4月25日(月) Bさんの勾留理由開示公判に大結集お願いします! オリンピックによる野宿者追い出しを許さない!一日連続行動

4月25日(月) オリンピックによる野宿者追い出しを許さない!一日連続行動



正午》 

勾留理由開示公判直前 
Bさん激励と仮処分決定・不当逮捕勾留に抗議!東京地裁前 情宣
  12:00 集合 東京地裁前

午後》 

Bさんが出廷します! 勾留理由開示公判
  東京地裁 430号法廷(警備法廷)
  13:00 集合 傍聴の説明 打ち合わせ
  傍聴券配布 13:10ころの見通し
  13:30 開廷  弁護士による求釈明、Bさん意見陳述
  ※終了後、報告会とメシ 

夕方》 

JSC(日本スポーツ振興センター)に大抗議!!!
  17:30 JSC仮事務所前 集合
   港区北青山2-8-35 
秩父宮ラグビー場前 
  メトロ銀座線外苑前徒歩3分 http://tiny.cc/d6ss9x

2016年4月22日金曜日

【速報】4.16弾圧 Bさんの勾留理由開示公判、決定!(4月25日 東京地裁) と 4月23日(土)緊急報告会のお知らせ  

4.16弾圧 Bさんの勾留理由開示公判、決定! 

 4月25日(月)13時30分~ 

 東京地裁  430号法廷
オリンピックで新国立競技場計画ゴリゴリごり押し  日本スポーツ振興センター(JSC)が明治公園野宿住人に仮処分攻撃!強制執行!!Bさん不当逮捕!!!大結集を!

※ 公判開始前に東京地裁前にて街頭アピール、公判終了後に報告会を持つ予定です。詳細決まり次第当ブログにてお知らせします


そして、急ではありますが、明日4月23日、

明治公園強制執行&不当逮捕 現状報告会 
やります!

4月23日(土)13時~ 
場所:明治公園こもれびテラス

※4月10日のデモ解散地(参考URL;地図あり)、旧日本青年館向かい、霞ヶ丘アパート横  
 最寄り駅 メトロ銀座線「外苑前」駅、都営大江戸線「国立競技場前」駅、JR「信濃駅」「千駄ヶ谷」駅

救援会からもBさんの置かれている状況などご報告させていただきます。ぜひいらしてください

《3.2弾圧》 Aさん救援カンパ有難うございます 収支報告

3.2 Aさん弾圧救援にさいし多くのカンパを寄せていただき本当に有難うございました!

おかげさまで20日間に及ぶ不当な長期勾留による分断を乗り越え、勾留理由開示公判にも全力で取り組むことができました。
以下に収支を報告します。皆さんのご支援にあらためて感謝申し上げます。

余剰金につきまして、Aさん勾留中に始まった民事事件―JSC・東京地裁民事9部による仮処分攻撃・4.16強制執行と、打ち続く明治公園野宿者強制追い出しにかかる弁護士費用がすでに相当額にのぼっており、これに全額を充てさせていただきたいと思っております。ご理解のほど、よろしくお願いもうしあげます。

そして、救援会はひきつづき、4.6強制執行の際の不当逮捕―Bさん弾圧に全力で取り組んでおります。

早期奪還に向け、Bさん弾圧救援に再度のカンパを呼びかけます。どうかいま一度、ご協力ご支援いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。




< 3.2 Aさん弾圧救援 収支報告 >

◯収入
振込カンパ 郵便振替・銀行口座(3/3~4/8) 計324,018 円
手渡し預かりカンパ(3/3~3/17) 123,419 円

合計 447,437 円

◯支出
弁護士費用(振込手数料含む) 223,240 円
ビラ印刷代、差し入れ等諸経費 6,432 円

合計 229,672 円

◯残金 217,765 円
全額を、明治公園野宿者への仮処分強制執行にかかる弁護士費用等に充てさせていただきます

2016年4月19日火曜日

4.16弾圧抗議声明ビラと救援カンパ口座 Bさん救援にご協力お願いいたします

Bさんを返せ! 4月16日の明治公園強制執行、Bさん不当逮捕についての抗議声明ビラが出来ました。

以下URLよりダウンロードできます。大拡散!ご協力をお願い申し上げます。
 
 
 
【救援カンパ】
一刻も早くBさんを取り戻すために支援と連帯をお願いいたします!

 みずほ銀行渋谷支店(普)9095210 「のじれん」
 郵便振替口座 00160--33429 「渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合」
 ※「救援」の旨明記ください。
 ※ 明記が難しい場合、カンパ額の一桁目を「9円」にしていただくとたすかります。例)1009円 

<連絡先>

オリンピック強制排除について
 国立競技場周辺で暮らす野宿生活者を応援する有志
   メール noolympicevict@gmail.com
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Bさん救援について
 オリンピックによる野宿者追い出しを許さない 新国立競技場3.2-4.16弾圧救援会    
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2016年4月16日土曜日

【声明】 明治公園に暮らす野宿者へのオリンピック強制執行、Bさん不当逮捕に抗議する 2016年4月16日

明治公園に暮らす野宿者へのオリンピック強制執行、Bさん不当逮捕に抗議する
2016年4月16日

<野宿者に強制執行、強行!>

 本日4月16日早朝7時、明治公園に暮らす野宿者のテントに東京地裁の執行官約25名が押し寄せ、強制執行が抜き打ち強行されました。JSCが申し立てた土地明け渡し仮処分申立に対し昨日15日決定を出したこと、荷物は豊洲の倉庫に強制移動する旨を口頭で告げるやいなや荷物をまとめ退去するよう命令。猶予はわずか20分。実際には15分も待たずに、中にいた数名が次々と複数の執行官に取り押さえられ押し出される形で強制的に公園の外へ追い出されました。野宿者の生活通路として唯一確保されてきた出入り口は、その時点で大勢のアルソックの警備員によって封鎖され、急報に続々と駆けつけた人々とも物理的に遮断された状態でした。中の様子もわからず、立ち会いすら出来ない状態でトラック5台が園内に乗り込み、野宿者の命の砦である小屋・テント、生活物資・荷物、応援する有志が置いていた所有物、共有物のすべてを持ち去っていきました。


<東京地裁の仮処分決定に抗議する>

 東京地裁民事9部は今回、野宿者3名が明治公園の敷地のほぼ全域を占有しているという実態とあまりにも異なるJSCの主張を鵜呑みにし、元明治公園=都有地を無償で貸与されたというだけの立場に過ぎないJSCに「土地を明け渡せ」などという前代未聞の決定を下したことになります。JSCが強行する新国立競技場、まだ基本設計すら出来ていない競技場建設工事着工を理由にしたところで、野宿者に対するJSC仮処分申立にはまったく理がないことを、3月24日の審尋で私たちは代理人弁護士とともに司法に問いました。東京地裁はその後の問い合わせに4月1日に担当書記官が変更となったことのみ返答。特別送達を持って通知する、それ以外は一切答えられないと、一方的に債務者と名指しされた野宿当事者がこうむっている精神的苦痛にさらに塩を塗るような返答をくりかえし、答弁書への回答はおろか、仮処分決定が下されたことも知らされないまま、本日、強制執行に着手しました。
 通常は仮処分決定ののち執行手続きがとられるはずが、決定の翌日それも早朝に大勢の警備を用意しての強制執行を行ないえた事実に今回の司法判断そのものへの疑念、不信感をぬぐえません。裁判所が徹頭徹尾、JSCを利する側に立ったことは明らかであり、オリンピックを理由にした野宿者の生存を脅かす強制排除にあろうことか司法が手を貸した事実を決して許すことは出来ません。


<荷物を返せ!生活を返せ!>

 今回の強制執行で、明治公園に暮らしてきた野宿者は、JSCの強権発動により生活基盤を丸ごと奪われました。
 私たちは荷物の取り返しと生活再建に全力で動くと同時に、JSCそして元明治公園敷地を所管する東京都オリンピック・パラリンピック準備局への広範囲からの抗議集中を呼びかけます。野宿者への仮処分を絶対に許しません。社会基盤の欠けた状況下、何もない中から自力で生活を立て直し生き抜いてきた明治公園野宿住人は、応援する有志とともにJSCに対し、脅迫まがいの退去強要ではなく現地住人の意に添う誠実な話し合いによる解決を求めてきました。7回もの団体交渉を持ち「話し合いで解決していく」「強制排除をしない」「人の暮らしている間は工事はしない」等の合意事項を結んできました。
 しかしJSCは昨年7月の新国立競技場計画「白紙撤回」以降、工事計画変更に関しても連絡を一切怠り、昨年12月になって住民説明会の場でこれまでの合意事項について「引き継いでいない」と一方的に反故にした上、今回の仮処分申立により、裁判で争う以前に野宿者の生活基盤そのものを強権によって奪いとるという究極の強制排除を実行しました。これらは、憲法25条、ホームレス特別措置法にさえ明確に反する上、国際人権規約そしてIOC(国際オリンピック委員会)オリンピックムーブメント・アジェンダ21にも違反します。このことについて、明治公園野宿住人はこのかん、JSCのみならず東京都オリンピック・パラリンピック準備局及びスポーツ庁に対し申し入れを行なってきました。しかしそうした関係行政すら今回のJSCの暴挙を見過ごし、強制排除を事実上容認したことに私たちは抗議します。


<不当弾圧に抗議する!Bさんをただちに釈放しろ>

 そして許しがたいことに、この強制執行の過程で、私たちの友人であり、明治公園に暮らす野宿生活者を応援する有志の一人であるBさんが不当逮捕されました。9時40分頃、野宿者が命をつないできた全財産である荷物を積みこんだトラックがゲートから出るその瞬間、動員された数え切れないほどの警察官、警備員が私たちの抗議を暴力的に阻みました。次々と道路向かい側まで引き摺り出される混乱の中で、Bさんに3人の執行官が襲い掛かり、警察車両に押し込め連れ去りました。現在、原宿署に不当に勾留されています。
 Bさんにかけられた容疑は「強制執行行為妨害」です。野宿住人に対し、土日は荷物の引き取りは出来ない、月曜に遠方の豊洲まで取りに来いと言い放った執行官に抗議し、荷物、中でも路上の夜間の寒さから命を守る毛布等は今晩にも必要だとして、直ちにこの場で引き渡すよう要求したBさんの行為はまったくもって正当です。
 民事執行法は168条において、
「5 執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない」、「6  執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかったものがあるときは、これを保管しなければならない」 としています。
 再三の引き渡し要求にもかかわらず、荷物を強引に持ち去るという違法行為をはたらいたのは、他ならぬ執行官です。今回、持ち去られた荷物の中には、野宿住人の生活や稼ぎに必要な道具一式、身分証明書など大事な物も含まれていました。Bさんや応援する有志の私物もたくさん持ち去られています。
 その場で引き渡さねばならないはずの荷物を運び出す時間も満足にとらず公園から強制排除し、荷物を持ち去った執行官及びJSCの違法行為を、私たちはBさん同様、決して許すことは出来ません。Bさんを一刻も早く取り戻すための救援活動を開始します。ご協力ご支援をお願いします。

                                                                                   
  2016年4月16日

           明治公園野宿住人
           国立競技場周辺で暮らす野宿生活者を応援する有志
           新国立競技場3.2-4.16弾圧救援会    



<連絡先>

★オリンピック強制排除について
 国立競技場周辺で暮らす野宿生活者を応援する有志
   メール noolympicevict@gmail.com
   ブログ http://noolympicevict.wix.com/index#!g/u1ok7
   ツイッター https://twitter.com/noolympicevict

★Bさん救援について
 オリンピックによる野宿者追い出しを許さない 新国立競技場3.2-4.16弾圧救援会    
   メール shin.kokuritu.danatu@gmail.com
   ブログ http://oidashisuruna.blogspot.jp/
   ツイッター https://twitter.com/reclaimmpark


【救援カンパ】
一刻も早くBさんを取り戻すために支援と連帯をお願いいたします!

 みずほ銀行渋谷支店(普)9095210 「のじれん」
 郵便振替口座 00160-1-33429 「渋谷・野宿者の生活と居住権をかちとる自由連合」
 ※「救援」の旨明記ください。
 ※ 明記が難しい場合、カンパ額の一桁目を「9円」にしていただくとたすかります。例)1009円 

2016年4月12日火曜日

それでも”報道機関”か! マスメディアは、警察情報の垂れ流しをしたことを猛省せよ!!

 「新国立競技場3.2弾圧」では、マスメディアによる人権侵害がまた繰り返されました。

 3月8日の「新国立競技場3.2弾圧 事実経過(3月7日現在)」でも触れた通り、今回のAさんの不当逮捕では、逮捕当日の3月2日に、NHKと民放各社の取材クルーが原宿署前で待ち構えて撮影を行い、Aさんの名前と容姿を垂れ流しました。
 テレビのニュースで報道されたのは、主に3月2日の昼です。これは、Aさんが同日午前8時過ぎに路上で不当に逮捕され、その後、原宿署に移送された時間から計算すると、3時間たらずでオンエアされたことになります。

 テレビ報道のニュース映像は、映像の編集作業だけでなく報道内容の確認作業やアナウンサーが読む放送原稿の準備、画面のテロップなども併せて製作されます。分業制をとっているとはいえ、作業にはそれなりの時間がかかます。
 したがって、取材内容を短時間でオンエアする場合は、事前に報道内容の方向性が決められているケース多く、今回のケースでは、後述するような警察の筋書きに沿った報道がなされたといって間違いありません。
 各局がAさんに関する報道を短時間に集中して流したのは、「オリンピックに反対する極悪人」という決めつけをして、世間にマイナスイメージを植えつける印象操作が目的であり、極めて悪質な行為といえます。

 一方、新聞報道はどうでしょうか。
 読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、東京新聞が3月2日当日の夕刊で、朝日新聞と産経新聞(産経は夕刊が無い)は、翌日の朝刊で報じています。いずれもAさんの名前を出しています。
 新聞紙面だけでなく、新聞社や通信社のWebサイトでも一斉に報道されました。
 朝日、読売、毎日、日経、産経、東京(中日)および、共同通信、時事通信のWebサイトでは、テレビニュース同様、昼の12時前後に報じています。さらに、共同通信から記事配信を受けているブロック紙や地方紙のWebサイト、時事通信から記事配信を受けているネットメディアもほぼ同時刻に記事を掲載しています。

 このほかにもラジオでは、少なくともNHK第1の昼のニュースで報道されたことを、私たちは確認しています。

 今回の報道で、マスメディアはAさんの名前や容姿を出す必然性があったのでしょうか?

 報道の時点で、Aさんは単なる被疑者にすぎず、結局、起訴もされませんでした。刑事被告人ですらない一個人の名前や容姿を、こぞって報じるのは、メディアリンチ以外の何物でもありません。
 比較のために例を挙げると、昨年5月28日の経産省前での不当逮捕では、産経新聞が3人のうちのひとりをツイッターのハンドルネームで報道した以外は、名前を出したメディアはありませんでした。同様に昨年9月16日の戦争法案反対デモの国会正門前での不当逮捕でも、「男12人、女1人の計13人」のように名前を伏せて報道されています。

 Aさんの名前や容姿を垂れ流したマスメディア各社および、記事を掲載したネットメディアにあらためて抗議します。

●各社の報道内容は警察発表の引き写し
 今回のマスメディア報道が異常と感じるのは、テレビ、ラジオ、新聞、ネットメディアが一斉にAさんの逮捕を報じた点です。記者クラブに属さない週刊誌各誌は、タカ派といわれる「週刊文春」や「週刊新潮」でさえ、まったく取り上げていないこととは対照的といってよいでしょう。

 問題点は、それだけではありません。若干の差異があるものの、警察発表の情報に基づいて、一方的に悪意のある内容で書かれたためか、各社とも報道内容が酷似しています。

 各社の報道を総合すると、以下のような内容に集約できます。

・日本スポーツ振興センター(JSC)の職員が暴行を受けた
・場所は新国立競技場建設予定地
・傷害と公務執行妨害の疑いにより逮捕(毎日は「疑い」と書いていない)
・バリケードをたたきつけ、(全治1週間の)けがをさせた疑い
・被疑者は黙秘している
・ニュースソースが警視庁公安部であること

 しかし、これらの報道内容には重要な考察が抜け落ちています。

 まず、被疑事実とされている「傷害と公務執行妨害」については、日本スポーツ振興センター(JSC)の職員が全治1週間のけがをするほどの事件であれば、なぜ、現行犯で逮捕されなかったのでしょうか? 公務執行妨害罪は現行犯逮捕が原則で、事後に令状逮捕する場合でも、犯人に逃げられて現行犯で逮捕できなかった等のケースしか考えられません。報道では、犯行時刻とされている時間は7時50分ごろとなっていますが、Aさんは、その後も現場から逃亡などせずに、JSCの不当な排除のやり方に対して抗議を続けていました。
 さらに、公務を行っているとされているJSCは1月27日当日に、抗議に来ていた大勢の人がいる場所にクレーンを使ってバリケード降ろすなどの不法行為を行い、極めて危険かつ強行的な手段で抗議参加者に対して圧力をかけてきました。はたして、これを「公務」と呼んでいいのでしょうか。

 そのほかにも「建設予定地周辺で暮らす野宿者の支援をしている団体の中心メンバーとみられる」(毎日新聞)、「五輪の開催に反対し、新国立競技場の建設予定地内で暮らす野宿生活者を支援する有志として、JSCに対する抗議活動をしていた」(朝日新聞)といった記述や、「路上生活者は立ち退いておらず、一部工事が中断しているため、都やJSCは対応を見当」(東京新聞)など、Aさんの抗議行動によって、あたかもJSCが職務を妨げられたかのような内容が散見します。

 しかし、実際はそんな単純な話ではありません。JSCは、新国立競技場建設に際して「(野宿の方が)住んでいる間は、工事をしない」「話し合いで解決する」と様々な場で明言していました。そうした映像や音声の記録も残っています。
 それにも関わらず約束を一方的に反故にされたため、Aさんは話し合いの場を設定してほしいと主張していました。だから、工事が中断したのであれば、話し合いの場を設けないJSC側に原因があります。朝日新聞に書かれている「五輪の開催に反対」という文言は結果にすぎず、JSCが話し合いの場を設けていれば回避できたことです。

 また、東京新聞の記事では「路上生活者は立ち退いておらず、一部工事が中断」と書かれています。これは、大成建設が受注している「下水道千駄ヶ谷幹線敷設工事」のことだと思われます。しかし、同工事は昨年7月の新国立競技場白紙撤回後の契約変更や、直近の3月10日には入札手続きを中止するなど、工事の遅れは、あくまでもJSCの都合によるものです。「路上生活者」が立ち退いていないからではありません。

●マスメディアは事実を確認したのですか?
 そして、活字メディアの中でも特に酷い報道内容だったのが共同通信です。
 共同配信の記事構成をみると、まず、事件の概要(被疑事実や実名報道等)があり、次に、警視庁公安部によるAさんについての人物像の記述が続きます。

 さらに後半部分では、警視庁公安部からの伝聞という形で「東京五輪に反対するため、路上生活者に都やJSCの立ち退き要請を拒ませ、工事を妨害」との記述がなされています。しかし、Aさんが「路上生活者」に「立ち退き要請を拒」むように教唆したような事実はありません。

 共同通信は、きちんと裏付け取材をした上で報道したのでしょうか?
 同社からは、当事者である野宿の仲間や周辺関係者に対して、事前、事後ともに上記の内容についての取材はありませんでした。報道する者の職責として、入手した情報に対して、まず当事者に、当事者に裏取りできない場合は複数の関係者に当たる、というのが取材の鉄則のはずです。しかし、共同通信には残念ながら、そうした姿勢はみられませんでした。単に、警察当局の主張を流しただけです。

 共同通信は「編集綱領・記者活動の指針」を、自社のWebサイトに掲載しています(http://www.kyodonews.jp/company/guide.html)。
 この指針の「基本姿勢」では、「客観的事実に基づく公正な報道に徹し、多様な意見や価値観を尊重する」「社会的弱者の視点を大切にする」「粘り強い継続取材や調査報道、綿密な分析によって事象の本質に迫る」などと書かれています。
 「人権とプライバシー」という箇所では「厳密な事実確認を行い、名誉を棄損したりプライバシーを侵害したりしないよう細心の注意を払う」との文言が踊っています。
 上記の指針を遵守しているのであれば、公安警察の筋書きをそのままの形で、拙速に報道することなどできないはずです。

 共同通信はかつて、公安警察が主導し、大分県菅生村(現・竹田市)の交番を爆破した謀略事件(菅生事件)の実行犯(大分県警の警察官/当時)が、都内に潜伏している所を見つけ出しスクープしました。このとき、警察庁幹部と同社デスクの取引で、一部内容を伏せて報道されたため、納得できなかった取材班の原寿雄氏が、社会部長に公開質問状を出したり、職場集会に編集局長を招いて見解を聞くなどの行動に出て、正確な記事を再配信させています。
 今回の垂れ流し記事では、こうした記者としての気概や職業意識といった点が、すっぽり抜け落ちていると言わざるをえません。共同通信には、特に猛省を求めます。

   ◆   ◆   ◆

 警察発表の記事を、そのまま流すだけでは、「報道機関」ではなく「権力の広報機関」でしかありません。垂れ流しに関わったマスメディア各社には、今回の公権力の濫用といえる不当逮捕について、きちんと検証するよう要望します。